チームとは何だろう? その④

そのようにして、チームの要素、目的と手段にフォーカスすると、たとえば目的達成に重きを持つ思考を「ミッション型」と定義し、協働することに重きを持つ思考を「バリュー型」と定義すると、筆者はミッション型を重視する傾向があるという自己認識がある。
もちろん、このミッション型とバリュー型は、どちらかに属するという2つのタイプ分けではなく、思考や行動の特性の強さとしての偏りとしての表現だ。

この偏りのイメージを、単純化した極端例ではあるが、もしバリュー型が強すぎると「このような行動を大切にしようね」との同調が心地よすぎる単なる仲良しクラブに成りかねないかもしれない。逆に、ミッション型が強くなりすぎると「これを成し遂げるんだ!」が強すぎて協働しない烏合の衆に成るかもしれない。どちらが強すぎてもチームとしての機能は低くなると考える。
そして、大きな組織になると、ミッション型の強いチームも、バリュー型の強いチームも、どちらも存在するし、メンバーが多くなるとチーム内でもミッション型が強いメンバーとバリュー型が強いメンバーのどちらも存在することになる。ミッション型の強いメンバー3人でチームをつくると、ミッション遂行のために割り切った行動が強くなるのかもしれないし、バリュー型の強いメンバー3人でチームをつくると、協働の強さにフォーカスしすぎるのかもしれない。
また、長い旅路では、メンバー個々人の中で、時にはミッション型を重視したり、時にはバリュー型を重視するような時間軸での変化もあるかもしれない。

また、プロジェクトチームのように、ある明確な達成すべき目標があり、数日から数年という期間限定で活動するチームは、ミッション型が強い傾向があるが、安定的な企業の定常組織では、コンフリクトを避け心地よい時間をつくるためにバリュー型が強い傾向がある、そう感じる。
特に、日本の伝統的な大企業は、バリュー型が強い組織多いだろう。筆者が支援した売上1兆円規模の企業は、「ある行動特性診断」をすると、9割が「仲間との心地よいつながりを重視する」特性に集中した。このような極端な偏りを示した結果は驚きであった。
逆に、あるイケイケ系の企業は、さまざまなプロジェクトが立ち上がり、目的達成によって解散する組織が多く、「ミッション型」が強い組織の典型であった。それは非常に稀な企業でもあったのだが。

さまざまな企業の支援をした筆者の経験上、日本の伝統的な大企業は、このミッション型が弱い。それは、バリュー型を重視し、バリュー型しか知らない人材が多くなってしまったことも要因だ。このバリュー型が多いというのは、定常的な行動特性としてバリュー型が強い人が多いというのもあるが、短期的にもバリュー型からミッション型に自分の行動を変える、スキルを持っていない、というのもある。

人間は、自分自身の行動を変えることができる。たとえば、職場では権威的でいつも威張っている部長が、家に帰ると妻にデレデレと甘えて子供のようになる、など、人は、その環境を認識して、どのように行動すべきかを自分で決めている。そして、その行動特性の幅が広くて自分自身で特性をマネージできると、バリュー型の強い定常組織の中でも、中短期的なプロジェクトでミッション型に変身して、そのプロジェクトを合目的的なスタイルでグイグイと成功に導きやすくする、こともできるのだ。
しかし、ほとんどの伝統的な日本の大企業の人材は、ミッション型の経験が乏しい。そして、社内がバリュー型で満たされている環境では、ミッション型として機能するためのトレーニングも、少なくともOJTではあまり行う事ができない。したがって、不確実性の低く直線的に成長する環境ではバリュー型でも機能した組織が、今の不確実性が高く多様な「敵」を倒さなければ前に進まない環境では、パフォーマンスが発揮されないのである。
そのような実情を鑑みても、特に、日本の伝統的な大企業では、ミッション型人材に変身できるような、OFF-JTが必須であると考える。
そのようなトレーニングをほとんど実施しないので、日本の伝統的な大企業は変革が進まない。それは、企業変革のための人材が乏しく、そして、その人材を増やすトレーニングもしないという状態が続いているのである。そして、そのようなトレーニングの必要性があると判断すべき責任者もバリュー型が強いため、必要であると気づいていないのである。
そして、そのようにミッション型に変身できない人材が多いまま、社内の変革プロジェクトを進めても、バリュー型が強い人材のチームのままでプロジェクトを進めてしまい、結果、目標達成への強いドライブをかけることができずに、プロジェクト失敗を繰り返すのである。

筆者は、多くの企業の多くの人材の変革を支援してきた。そしてそれは、ある意味バリュー型とミッション型を両立させられる人材の開発でもあるのだが、上述した日本企業の特性により、バリュー型人材を対象とした、ミッション型の特性を強化する傾向が強いトレーニングが多い。それは、前述したように、日本の企業の人材がバリュー型の強い人が多く、ミッション型が非常に弱い人材が多い、との環境に適合した支援でもある。