組織開発の難しさと複雑系
組織開発が難しいのは、人組織が「複雑系」であることが本質的な難しさとなっている。
この「複雑系」について、概念的に理解されている方も少なくないとは思うが、私が出会ったほとんどの人は、複雑系について踏み込んで考えたことはほとんどなく、その難しい複雑系を紐解く整理された手段も持ち合わせていない。
そして、多くの企業に絶えず横たわっている難しい課題であるにも関わらず、その解決について議論する機会も少なく、そして解決の難しさゆえに組織開発そのものがなかなか話題に上がってこないとも感じている。
また、人組織が複雑系であるため、その複雑系の構成要素の一つである内部の人が扱いにくい、つまり人組織内部の関係性と相互作用によって「簡単にはいかない」ため、結果として話題に上がりにくいのかもしれない。
私は複雑系の科学の専門家ではないが、組織開発を支援する専門家でもあるため、そのスキルを鍛え磨く過程で複雑系についての理解は高い状態になった。
そして、人組織の複雑系に対応する組織開発の支援ができているのは、これまでの人生の中で積み重ねた経験から得た身体知としての学びと組織開発を支援する専門家としての勉強・鍛錬が融合したものだ。
私の人生の中では、もう遠い過去のことになるが、事業会社から経営コンサルティングファームに転職した後は、ロジカルに考え処理することに対してまだまだプロフェッショナルではない自分自身に直面し、さまざまな自己研鑽を積み重ねて、論理的思考を強化し「コンサルタントとしての高い論理的思考」を備えることができた。
そのコンサルファームでは、上長であるコンサル先生の言葉を受け継ぎ、クライアント企業の支援にあたっていた。
「人が悪いのではないのです。しくみが悪いのです」
そう言って、コンサルティングプロジェクトでは、しくみを改善することを主体としていた。その当時の私も、その通りだと思っていた。たしかにしくみが整っていない。そして、そのしくみを改善・改革することで多くの効果が得られていた。
そのような、企業経営のしくみ部分にフォーカスした支援を続ける中で、「とは言え、人に関わる時間が多いよな・・・」と感じていた。そして、人に関わり、人と対話し、人の理解と納得をつくり、人が変革する手伝いをすることで、プロジェクトを成功させることが「しくみ改善」でも必須となっていた。
「人が悪いのではないのです。しくみが悪いのです」
そう言って「しくみ」にフォーカスしてコンサルティングを行っていた際、問題解決のロジックは、単純系の問題を対象としたロジックだ。現状とあり姿の差異が問題。問題を分析して要因解析して原因を追究する。その原因の中で排除すべきものを排除する。ロジックツリーのWhyツリーを多用して原因を追究する。そのようなアプローチで解決できる「しくみの問題」がほとんどだった。
そのコンサルファームを去り、数回の転職で、人材育成組織開発を専門的に支援するIWNC社の一員となり、人材育成・組織開発のプロジェクトを多くこなしてゆく中で、多くの発見もあり、自分自身のスキルも高まった。
そして、徐々に自分自身の思考特性も変化し、これまで自分自身の中で結論づけていたことにも変化が起こっていった。
この世の中に存在している多くの課題は「複雑系」であり、一般的な問題解決のロジックで進められる「単純系」ではない。企業変革の場合は、その複雑系の主な構成要素は人である。その人の集合体という複雑系に、単純系を対象とした問題解決のロジックでは、不足なのだ。
「人が悪いのではないのです。しくみが悪いのです」
過去に使っていたその言葉は、もう使わなくなっていた。
そして、
「人が変わらなければ、なにも変えられない」
そのような確信に変わっていった。
日本企業は、過去のある時期に、単純系の問題解決を企業の中の改善活動に導入し、さまざまな人が単純系の問題解決スキルを高めた。それによって企業は経営効率を高めることができた。それは事実だ。
しかし、複雑系には対処できていない。そして、複雑系に対して、未だに単純系の問題解決ロジックで進めようとしている、それが実態だ。だから、企業変革、とくに人組織の領域での変革が進まないことも多いのではないだろうか。私はそう感じている。